ストレスが多い世の中、気分が落ち込んだり、漠然とした不安があったり。
検索すると精神の落ち込みやうつには『運動&筋トレ』が効くとされています。
果たして本当なのでしょうか?
うつの現状
病的なうつ状態や不安障害を持っている人は、先進国でおおよそ5~10%であると推定されています。
様々なタイプのうつ病全体をあわせると10~20%の人が苦しんでいるという報告もあります。
(Taylor,2000;Biddle&Mutrie,2001;Landers&Arent,2001;大野2000)
うつ状態や不安障害の治療法は
①薬物療法
②精神療法
③電気けいれん療法
が行われています。
薬物治療にはお金がかかり個人や国の財政を悪化させる原因ともなります。
そこで経費の掛からない代替えの治療法として運動療法に高い関心が注がれました。
運動の不安軽減効果
Tuson&Sinyor(1993)は運動が情緒に及ぼす影響についての論文113本を調査したところ
改善効果あり:48本
変化なし:59本
悪化:6本
と報告しています。
結果として『実証的な効果は不十分』と結論付けました。
しかし、研究が進むと違った結論が見えてきます。
Landers&Petruzzello(1994)の研究では27本中 81%が、Leith(1994)では56本中 73%が運動の不安軽減効果を見出しています。
Taylorらは多くの論文やレビューを総合的に精査・吟味して不安軽減効果の結論を見出しました。
①運動は小から中程度の不安軽減効果がある。
②有酸素運動と非有酸素運動の不安軽減効果の差は明らかでない。
③中程度から高程度の運動強度で不安軽減効果があるが、特に中程度で効果がある。
④運動のうつ軽減効果は、ほかの精神療法と同等の効果。
⑤運動はうつ病患者にネガティブな影響を及ぼさない。
Taykar(2000),Biddle&Mutrie(2001),Landers&Arent(2001)
結果として『運動には不安軽減効果があるが、小から中程度』と結論づけられました。
不安を軽減する運動と頻度は?
不安を軽減する運動強度は中程度から高強度であり特に中程度で効果があります。
具体的な運動種目
- ウォーキング
- ジョギング
- ランニング
- ウエイトトレーニング
運動時間と頻度
運動時間と頻度
1回の運動時間:20~60分程度
1週間につき3~5回
1週間に3回以上30分以上の運動を実施すると不安軽減効果を引き出せます。
運動は1回でもだけでも不安軽減効果があります。
なぜ運動は不安軽減効果があるのか?
不安軽減に関する運動の効果について、いくつかの仮説があります。
ここでは説得力のあるとされる2点を紹介します。
①自己効力感説
運動によって健康や体力が向上し、運動実践能力が体の改善をし、自信をもたらす。
その結果、自己効力感が高まり、意欲・活動能力・行動力等を高めうつ状態を改善します。
②ベータ・エンドルフィン増加説
ベータ・エンドルフィンは人間や動物に対して気分の快感や平穏をもたらします。
その結果、不安軽減を生き起こすと言われています。(Landers(1994), Taylor(2000))
その後2008年には聖路看護大学 小口氏らにより、遷延性うつ病患者の運動療法の報告がされています。
方法
薬物療法を最高量まで投与しているが半年以上過ぎても改善が見られない患者2人に薬物療法に加え運動療法を実施した。
①身体的フィットネス測定にはドレッドミルを使用。
②うつ病の症状は初回及ぶ1か月ごとに健康運動指導士が定期的に評価。
③気分評価は患者自身が記入し評価。
結果
・うつ病の評価は初回が22点だったが徐々に下降し終了時には3点と確実に減少
・抑うつ気分、精神的不安、心気症も着実に減少した。
患者2名に同じような結果が認められました。
この結果、うつ病患者への運動療法の併用は効果的と示唆されました。
私の実体験
うつ病とまではいかないのですが私の実体験です。
緊急事態宣言がでて、外出もできず家に閉じこもり、ジムにもいけない日が続きました。
その結果、少しづつ体調を崩し、なぜかよくないことばかり考える日々が続きました。(大きな決断をする時期でもありました)
何もないのに涙が出たり、自己批判を繰り返してみたり。
その症状は運動を自粛してから出始めました。
しかし、散歩をしはじめてから改善傾向が見られ、ジムが営業再開してからは普通の体調に戻りました。
精神状態もイケイケです。
その時に、体と精神はリンクしていて体を動かすことが精神安定にもつながることを自覚しました。
気分が少し落ち込んだ時は早めに運動をし対処することをおすすめします。
まとめ
運動はうつや不安軽減に有効です。
中程度の負荷で1週間に3回以上30分以上の運動を実施すると不安軽減効果を引き出せます。
運動の種類は有酸素運動での筋トレなどの非有酸素運動でも有効。
しかし、うつ病を発症した疑いがある場合は運動の前に医師に相談しましょう。
気分がすぐれない、漠然とした不安がある人は筋トレなどの運動すると気分が向上する可能性があります。
手軽にできる散歩やヨガからはじめてはいかがでしょうか?